WRITTEN BY

山﨑 ローソン

2丁目のゲイバーでしこたま飲んだ帰りの電車。隣に座るもっきーがビニール袋に吐瀉物をぶちまける中、なんとなくこれを書いています。

今日は3人で飲みに行き、鏡月を丸々二本とショットで何杯かをいただきました。
店子をやっているもっきーは何かとお酒をいただく機会が多く、僕に比べると随分と泥酔しています。

こんな酔った日には、僕は元カレのことを思い出します。
彼は酔っ払いが嫌いとよく言っていて、付き合いの末期の頃にゲイバーに通うようになった僕が酔っ払って帰ってくると、よく小言を言ったものです。
彼は年齢こそ僕より上だったものの、頼りない部分が多かった彼を守る王子様になりたくて、何かと気を張りすぎだ結果お酒の楽しさに溺れた側面もあります。

酔い、というのは。
ある瞬間気持ちよさのピークが来て、その後も、さらに気持ちいい瞬間があるんじゃないかと飲み続けるとそんな瞬間が来ることはなく、あとにはただ気分の悪さが残ったりするものです。
腹八分目とはよく言ったもので、ピークの気持ちよさの手前でペースを落とし、80%の気持ちよさを持続させるのが飲みの席を長く楽しむコツではないでしょうか。

こんなに泥酔したもっきーを介抱したのはずいぶん久しぶりで、今も最寄り駅の数駅手前で降りようとしたところを静止したところです。

飲み方について偉そうなことを言っても、結局の所その場の楽しさに負けて飲みすぎてしまうのが、人間らしさというものです。
理性が本能に負ける瞬間を楽しみ、もしできることなら、そんな瞬間をともに楽しむ仲間や、後始末をしてくれる友人がいてくれると、その瞬間こそ、幸せの尻尾を掴んだように感じられるのではないでしょうか。

もっきーの最寄り駅で別れ、あと少し、一人での帰路が待っています。
僕は、僕の元カレが嫌う人間になってしまったかもしれないけど確かに幸せで、そんな自分のことを愛おしく感じます。
こんな自分を好きと言ってくれる人が現れるのか。それはまだ、この先のお話。
もう少しだけ王子様を待ちながら、僕一人が住んでいる城へ帰ります。
おやすみなさい。

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