WRITTEN BY

山﨑 ローソン

QUEER×APAC~APQFFA傑作選2018~

どもっ、ローソンです。
以前Podcast内でも取り上げたLGBT関連の映画祭『第27回レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~』で映画鑑賞をしてきました。
僕が見たのは『QUEER×APAC ~APQFFA傑作選2018~』というタイトルで3本の短編作品+1本の中編作品の計4作品をまとめて上映する企画です。
今回はそのあらすじと感想をご紹介します。一部ネタバレを含みますのでご注意ください。

新入生

新入生

あらすじ

主人公はもうすぐ中学に上がる少女。小学校では生まれたときの性別である男子用の制服を着てトーマスという名前で通っている。
中学に上がることをきっかけに、女子の制服を着用し女性名のハンナとして学校に通うことを決意する。
過去の自分を知らない環境で一人の女の子として生活をするが、ある日同じ小学校に通っていた女子生徒に出会い……。

感想

進学する、これまでと全く違う環境で、本当の自分として。
その瞬間の不安を映像と音で表現していて、視覚と聴覚がハンナとシンクロするような感覚になります。
ハンナの愛らしい見た目が、背景にあるテーマの重さと強いコントラストを生み出していました。

短編ゆえ、物語としては『起』の部分で終わったような印象です。思春期という物語の中で、ハンナが勇気を出し歩き始める瞬間を描いています。
ラストシーンでハンナが差し出した手。後の物語を想像させる余韻のある作品でした。

言葉にできない

あらすじ

インド、ムンバイ。夜を走る電車の中で一人佇む青年は、一人のスーツを着た男性と視線が合う。男性の左手の薬指には指輪が光っている。
何度も同じ電車に乗り、一言も言葉を交わさないのにお互いを意識していく二人。
向かい合い、今にも触れそうな手をそれでも触れず、別々のホームに降りていく。

感想

全編を通してセリフが一切なく、環境音や息遣いのみで表現されています。
明らかに惹かれ合っているのにお互いに全く触れず、ある瞬間では青年が目に涙を浮かべていたりします。
この二人はなぜここまでくっつかないんだろう、過去になにかあったのだろうかと思案していると、ラストシーンの字幕で、インドでは同性愛は違法であることが語られます。
映像の中の違和感が一気に紐解け、こんなにも切ない作品だったのかと驚愕しました。

愛し合う二人が触れ合うことすら許されないなんて子供ですらわかりそうな悲劇ですが、それがまだ伝わならない国も全然あるんですよね。
FIFAワールドカップのロシア大会でもLGBTへの差別(同性愛プロパガンダ禁止法など)が話題になったのが記憶に新しいです。
そんなゲイの置かれている立場が、どこまでも静かに、切なく表現されていました。

あらすじ

1997年、香港に暮らす主人公の少女は、ある日両親が喧嘩をしている声を聞く。
着飾って一人で映画を見に出かけた母親のあとをつけると、そのとなりには一人の女性がいた。
母の浮気と二次性徴を迎える自分、そして中国へ返還され変化していく世の中で彼女は何を思うのか。

感想

他の作品とは違って主人公自身はセクシャルマイノリティ当事者ではないため、雰囲気がまた違う作品でした。
体型の変化や生理など自身の体の変化についての興味と、ある日知ってしまった母親の秘密、家を空けている日の多い父親との関係性など、短編でありながら主人公を取り巻くテーマを複数入れ込んでいるのも変わっています。

それ故に、なにか結論があるわけではなくもやっとした終わり方をするのですが、そこもまた子供ゆえの無力さなのかもしれないですね。
周りの環境も自分自身も変わるけれどそれになにかできるわけでもなく、何かを変えたいわけでもない。そうやって流されていくうちに大人に近づく年齢なのでしょう。

ルッキング・フォー?

あらすじ

今やゲイにとってもっとも身近な出会いツールである『アプリ』。そんなゲイアプリとの付き合い方を軸に、約60人のゲイに行ったインタビューをまとめた作品。
あまりにも多様なゲイ同士の『関係性』に対して当事者がどう感じているのか、そしてそのインタビューを通じてインタビュアーの青年は何を考えるのか。

感想

61分の中編、そのほとんどすべてがインタビュー映像で構成されていて情報量がとても多いです。
ゲイの出会いアプリでプロフィールを登録する際に「何を募集している?」という項目があります。
どんな相手と、どんな関係を探しているのか。ゲイ同士の『関係性』は、ストレートに比べるとその定義がとても曖昧で、多様です。
正解の存在しないテーマについて、大勢のゲイへのリアルなインタビューによって形を探ろうとするアプローチはとても真摯で好印象でした。
全員言っている意見はバラバラなのだけれどそのどれも否定的に描かれない。そういう真面目な映画づくりは本当に魅力的で大好きです。


さてさて、皆さんはなにかレインボーリール東京で映画を見ましたでしょうか?
今回は行けなかったという方も、来年はぜひ見に行ってみてください
それでは!

※一部の画像をレインボーリール東京公式サイト(http://rainbowreeltokyo.com/2018/)より引用しています

CATEGORY